コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸(CS/DS)は、細胞表面や細胞外マトリックスに普遍的に存在する硫酸化グリコサミノグリカン糖鎖で、形態形成や細胞間相互作用など生命活動に必須の役割を果たしている。最近の研究から、CS/DSの機能発現には、その特徴的な硫酸化構造が重要であることが分かってきた。本研究課題では、CS/DSの硫酸化構造と生物機能との相関を明らかにするため、CS/DSの硫酸化を担う硫酸基転移酵素群に焦点を当て、それらの発現プロファイルや機能解析を行なった。 (1)GalNAc4位の硫酸化は、脊椎動物由来のCS/DS中に観察される主要な硫酸化修飾構造である。これまでの解析から、GalNAc4位の硫酸化を担う硫酸基転移酵素のひとつであるC4ST-1の機能をノックダウンしたゼブラフィッシュ胚(C4ST-1モルファント)は体軸や尾部が曲がったり、ねじれたりする形態異常を示すことが分かっている。今回、C4ST-1モルファントを用いた種々のマーカー解析を行なった結果、筋分化・成熟のマーカーであるMyoDの発現異常が認められたことから、C4ST-1モルファントで観察される形態異常は筋組織形成の異常に起因する可能性が示唆された。 (2)高硫酸化二糖単位であるEやiEユニットを含むCS/DSは、神経突起の伸長を促進する因子として中枢神経系で重要な役割を果たしていることが示唆されているが、E/iEユニットを含むCS/DSの脳における発現時期や発現分布についてはこれまで解析されていなかった。今回、Eユニットの生合成に関与する硫酸基転移酵素であるGalNAc4S-6STの詳細な基質特異性を調べ、本酵素がEユニットのみならず、iEユニットの生合成に関与することを見出した。さらにGalNAc4S-6ST mRNAの生後発達過程の脳における発現をin situ hybridization法により調べた。その結果、生後7日目において、GalNAc4S-6ST mRNAは小脳、海馬および嗅球に強く発現していた。これらのことから、E/iEユニットを含むCS/DSがこれらの神経活動の活発な領域に分布し、神経の発生や、移動、軸索のガイダンス、神経の生存などに関与していることが示唆された。
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