Gaucher diseaseは、リソソーム酵素であるβ-glucocerebrosidaseの遺伝的活性低下に起因するリソソーム病の1つである。本疾患のうち亜型では、酵素の合成には異常は認められないが、正しい三次元構造をとれないことが疾患の発症原因の1つとされている。本年度は、昨年度の成果に基づき、正しい三次元構造がとれない不安定な変異酵素を安定化させうる化合物を更に探索するとともに製剤化を目指したデザインを行った。その結果、新たにピロリジン型イミノ糖に活性部位指向的なケミカルシャペロン効果が確認された。これまでにケミカルシャペロン効果が確認されている代表的な化合物として、ピペリジン型イミノ糖である1-deoxynojirimycin(DNJ)のN-アルキル誘導体が知られているが、N-nonyl-DNJはβ-glucocerebrosidaseに対しKi値が0.30μMと強い親和性を示す優れた化合物で有る反面、α-glucosidaseに対しても強い親和性を示すため、実用化に向けては副作用の発現をいかに抑えるかという問題を抱えていた。今年度の研究成果から見いだされたピロリジン型のイミノ糖は、ピペリジン型イミノ糖とは異なり、細胞内糖鎖プロセシングに対し、最大1mM添加によっても糖鎖構造に全く影響を与えないことが明らかとなった、そのためピロリジン型イミノ糖は、従来型に代わる副作用の発現を抑えた新たな基本化合物となりうる可能性が考えられる。現在は、アルキル側鎖の導入位置や長さなどについて更に追試を行い、これら化合物がケミカルシャペロンとして細胞内で適切に機能するか否かについて検討を行っていく予定である。
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