研究課題
近年、"ケミカルゲノミクス"と呼ばれる新しい学問分野の進展に伴い、大量の化合物-タンパク質相互作用情報が蓄積されてきており、この中から有用な情報を抽出する情報科学的手法の開発が重要性を増してきている。そこで、初年度である本年は、タンパク質-化学物質間相互作用の予測手法として、これらケミカルゲノミクス情報から統計的に保存された相互作用パターンの抽出と予測を行う新しい方法を開発し、既存のin silicoスクリーニング法との比較検討を行った。具体的には、化合物-タンパク質相互作用をそれぞれの特徴ベクトルの結合ベクトルで表現し、機械学習アルゴリズムであるサポートベクターマシン(SVM)を用いて相互作用パターンの抽出を行った。また、この研究では、創薬標的として注目されているGタンパク質共役型受容体(GPCR)と化合物の相互作用予測に、今回開発した手法を適用して性能評価を行った。5-fold cross-validationにより評価した結果、化合物構造に基づく従来の方法では約82%、相互作用情報に基づく新規手法では約91%の相互作用を正しく予測した。さらに、化合物ライブラリーに対して、新規手法を用いてヒトβ2アドレナリン受容体(β2AR)に結合するリガンドの探索を行い、in vitro実験等で検証を行ったところ、予測されたリガンドの81%(17/21)が実際に結合することが確認され、さらに、従来法では見つからないような新規骨格を持つβ2ARリガンドの検出に成功した。以上から、ケミカルゲノミクス情報がリガンド予測精度の向上のみならず、新規骨格を持つリガンドの検出にも有用であることが示唆された。
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