抗癌剤候補物質ベラクトシンAのプロテアソーム阻害作用と酵素サブユニットのリン酸化修飾の関係を明らかにし、その抗腫瘍効果への影響を明らかにする。具体的には、ベラクトシンAの20Sプロテアソームサブユニットにおける作用部位を同定し、リン酸化修飾と阻害剤作用の関係を明らかにする。そこで、まずプロテアソームのリン酸化修飾とベラクトシンA作用の関係を解明するための手がかりを得るために、ベラクトシンAの作用部位を同定する。まず、ベラクトシンAの作用部位において、酵素活性触媒部位を構成する活性型側鎖とベラクトシンA分子内のβ-ラクトン環が反応し、共有結合を形成していることを明らかにした。また、前年度の取り組みでヒト赤血球より精製された20Sプロテアソームについて、抗リン酸化修飾抗体でリン酸化状態を解析した。今年度は、ウシ血液からプロテアソームを精製しリン酸化修飾の状態を解析し、顕著にリン酸化されたサブユニットを同定した。ウシ血液は入手が容易であることから、プロテアソームを大量精製し、ゲル内酵素消化と質量分析装置による解析によりリン酸化修飾されたサブユニットの種類を確定した。次年度は、これらのサブユニットのうち阻害剤が直接作用するβサブユニットの焦点を絞り、リン酸化状態を解析する。リン酸化修飾と阻害剤作用の相関が解明できれば、そのリン酸化修飾がプロテアソームの生理的活性制御を行っている可能性が高く、この研究によりプロテアソーム機能について新たな知見を得られる期待は大きい。
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