研究課題
ベラクトシンAは、強いプロテアソーム阻害作用を持つ天然物由来の低分子化合物である。他のプロテアソーム阻害剤にないユニークな構造(非天然アミノ酸・トリペプチド型・βラクトン)を持つベラクトシンAとプロテアソームの分子間相互作用解析を行った。直接的結合するサブユニットを同定するために、ビオチン標識ベラクトシンA誘導体を作製し、化学発光を利用した検出を行った。その結果、ベラクトシンAは、精製された20Sプロテアソームに対しては、蛋白質分解を担うサブユニットのうちβ5サブユニットへの結合親和性が高いことが観察された。次いで、細胞内のプロテアソームへの作用を直接観察できる細胞膜透過性の高い標識ベラクトシンA誘導体を作成した。これを用いてin vivoとin vitroの薬剤の挙動を比較したところ、以下のような知見が得られた。ベラクトシンAはin vitroでは、経時的にβ5サブユニットに優先的に結合し遅い結合解離速度を示すが、in vivoにおいてはβ1サブユニットに優先的に結合し速い結合解離速度を示す。さらに、その詳細を26Sプロテアソーム再構成系で検討した。検討の結果、この違いは細胞内に存在する制御サブユニットである19S複合体の影響によるものと示唆された。以上の結果から、種々の阻害剤に固有のサブユニットへの作用選択性に関して、19S複合体の影響がクローズアップされ、in vivoとin vitroという観点から見直しをはかる必要があることが示された。
すべて 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 図書 (1件)
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 18
ページ: 5668-5671