ヌクレオシド類縁体による、RNAウイルスを標的とした抗ウイルス剤の創薬研究において、以下の知見を得た。 1.C型肝炎ウイルス(HCV)に対する抗ウイルス剤の研究:6-クロロプリン-2'-デオキシリボシドを基本骨格として、5'-位水酸基に様々な化学的修飾をほどこした核酸アナログの合成を行い、それらの抗HCV活性の評価(レポータージーンアッセイ、リアルタイムRT-PCR、及び細胞毒性試験)を行った。その結果、5'-位水酸基を保護した化合物においても抗HCV活性を示すことが分かり、保護基の種類によりその活性の程度が大きく変わる結果となった。中でも、ベンゾイル基を用いたアナログは最も高い抗HCV活性を示した。また、ベンジル基で保護したアナログにも高い抗HCV活性が観察されたことから、5'-位水酸基のリン酸化を伴う従来の核酸アナログ型の抗ウイルス作用メカニズムとは異なる様式で活性を示している可能性も示唆され、大変、興味深い知見となっている。また、抗ウイルス活性の向上を目的に、核酸塩基部に関しても種々の置換基を導入したアナログの合成、並びに抗HCV活性の評価を行ったが、大幅な活性の向上は見られなかった。 本研究に関しては医薬化学系学術誌(Bioorganic & Medicinal Chemistry)にて論文発表を行った。 2.SARSコロナウイルスに対する抗ウイルス剤の研究: 核酸アナログを用いて幾つかの検討を行ったが、前年度の結果を上回る大幅な進展は見られなかった。
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