研究概要 |
核内受容体を介する生理作用を,低分子リガンドと受容体タンパク高分子の反応という観点から捉えるとき,反応のインターフェイスを提供するのは核内受容体である.これまでのリガンドデザインは,受容体親和性向上を目指したアプローチが大半であった.低分子リガンドによって,核内受容体のDNA結合能が変化する可能性を調べるため,核内受容体スーパーファミリーのうちからサブタイプの存在しないビタミンD受容体(VDR)に着目した.まず,新規VDRリガンドをデザインし,その効率の良い合成法の確立を試みた.誘導体合成は,鎖状のA環部エンイン前駆体と側鎖部を含むCD環部前駆体を,別々に合成して後に連結する収束的方法にて行った.A環部エンイン前駆体の合成は2種の方法にて行った.3-ブテン-1-オールを出発原料とし,3位に相当する水酸基の立体化学をシャープレスAD反応により誘導する方法と,グルコース誘導体を出発原料に選び,キラルソースとして用いる方法である.前者を用いて,VDRのリガンド結合領域に存在する唯一のアルギニン残基をターゲットとした新規誘導体の合成に成功した.さらに,後者の方法を用いて,フルオロメチル基を有する新規誘導体の合成を行った,また,オリゴDNAを用いた評価系確立のため,ステムループ構造を有する2種のオリゴDNAの分離精製,及び同定方法を試みた.互いに相補的な4つの塩基からなるループ構造の場合,2種のオリゴDNAは質量分析により同定できることを見いだした.
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