高コレステロール血症は動脈硬化性疾患のリスクファクターとして知られ、現在その第一選択薬であるスタチン類に加えて新たなメカニズムで作用する治療薬が常に求められている。数年前、Ezetimibeという化合物がコレステロールの腸管吸収を抑制することが報告され、その後の研究でNPC1L1という蛋白がこの現象に関与するトランスポーターであることが示唆された。本研究はNPC1L1の機能を阻害する物質を天然物および合成化合物より探索しコレステロール吸収阻害剤のシーズを提供するとともに、NPC1L1の詳細な機能解明に向けたバイオロジカルツールとしての利用への道を開くことを目的とする。 EzetimibeはNPC1L1と直接結合することでその機能阻害活性を発現することが知られている。最近ではEzetimibe蛍光誘導体でこの結合をモニターすることが可能となっている。そこで本化合物とNPC1L1との相互作用をキャンセルする物質を探索するアッセイ系を構築することとした。その際、ヒトでは腸管のほかに肝細胞系に目的蛋白が高発現していることが報告されているので、市販のNPC1L1抗体にてこれを確認した上で肝癌由来のHepG2細胞を利用した。EzetimibeにBODIPYを導入した蛍光誘導体を合成しこれをHepG2細胞に添加したところ、蛍光顕微鏡にて明らかな結合が観察され、96穴プレート上でその強度が数値化された。一方、本化合物とNPC1L1を殆ど発現していないRKO細胞とを作用させた際の蛍光強度を非特異的結合によるものとすると、HepG2の際に観察されたそれとは有意な差があった。但し、現時点ではアッセイ系として利用するのに十分な感度が得られていない上に再現性も不十分であり、培養条件やNPC1L1の膜への誘導などを検討し速やかに改善したい。
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