前年度に引き続きアッセイ系の確立を目指した。HepG2細胞のNPC1L1を蛍光エゼチミブ誘導体により観察する際の低感度の問題は当トランスポーターが十分に膜上に誘導されていないことに起因すると考えられた。そこで、文献を参考にシクロデキストリン類によりコレステロール飢餓の環境を作り出す方法、もしくはコレステロール欠乏培地を利用することで解決を試みたが、前者では毒性発現、後者では不十分な誘導能により目的を達することはできなかった。現在までにNPC1L1を高発現させたCaCo-2細胞の供与を受けており、これを用いて1)蛍光エゼチミブ誘導体の結合を確認後、これをキャンセルする化合物の探索、2)膜画分を調製し、ここに存在するNPC1L1と蛍光もしくはRIエゼチミブ誘導体の相互作用を観察、さらにこれを打ち消す化合物の探索、3)RIコレステロールの本細胞への取り込み阻害を直接観察すること、のいずれかでスクリーニング系を完成することを目指し、必要な試料の調整を進めている。現時点では細胞関連の材料についてはほぼ調整を終えており、またRIエゼチミブ誘導体も合成完了間近である。 一方で、スクリーニングソースとしては最終的には微生物由来の天然物の使用を目指しているが、一般にNPC1L1の機能阻害を観察する際、化合物の添加方法に工夫が必要となるケースが多いことから、並行して合成小分子ライブラリの利用を検討した。これまでに代表的既知阻害剤エゼチミブを初期構造としたファーマコフォアモデリングによるヴァーチャルスクリーニングから、比較的容易に入手可能な数百種のヒット候補を得ており、アッセイ系確立後、この中から直ちに真のヒット化合物を選択できる態勢となっている。
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