前年度に引き続き、はじめにアッセイ系の確立を目指した。HepG2細胞のNPC1Lを蛍光エゼチミブ誘導体により観察することが困難であったことから、当該蛋白を高発現させたCaCo12細胞の供与を受けたのち、これを用いて1)蛍光エゼチミブ誘導体の結合を確認後、これをキャンセルする化合物の探索、2)膜画分を調製し、ここに存在する評CILlと蛍光もしくはRIエゼチミブ誘導体の相互作用を観察、さらにこれを打ち消す化合物の探索、3)RIコレステロールの本細胞への取り込み阻害を直接観察すること、のいずれかでスクリーニング系を完成することを目指した。 1)の方法では使用する細胞が僅かな培養条件の差により増殖速度が大きく振れるため、再現性よく高感度で目的とする蛍光誘導体の結合を観察することができなかった。当該細胞が高発現しているIVCILlが何らかの毒性を示すことが原因と考えられる。 2)の方法では膜画分の作製は定法に従い可能であった。しかし、非特異的結合に由来するバックグラウンドの影響を受けずに結合を傾向により観測するためにはスクリーニングに事実上使用不可能なほど大量の膜画分を調製する必要があり、断念することにした 3)の方法では一回のアッセイあたり12.5g(蛋白換算)と、現実的な膜画分量を使用するシステムを確立できた。ここでは、二種の既存阻害剤を用いたモデルアッセイにより論文と矛盾しない活性差を確認している。 また、前回までに既知阻害剤の構造を基にファーマコフォアモデリングによるヴァーチャルスクリーニングを行い、市販化合物中にヒット化合物候補を数百種見出していた。今回はそのうち100化合物と、自家ライブラリ化合物2000を、上記アッセイ系に付したものの、活性化合物は見つかっていない。現在は化合物の追加購入とヴァーチャルスクリーニングの再実行を検討している。
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