酸化亜鉛ナノ粒子のアジュバント作用について検討した。抗原である卵白アルブミンとともに酸化亜鉛ナノ粒子を単回腹腔内投与されたマウスでは、抗原投与21日後の血清中の抗卵白アルブミンIgG量が、卵白アルブミンのみを投与されたマウスの血清中のIgG量と比較して多いことが明らかになった。このような酸化亜鉛ナノ粒子のアジュバント作用は、脾臓細胞の卵白アルブミン依存性増殖反応、Th1反応の指標となるIgG2a、Th2反応の指標となるIgG1およびIgEの産生に対しても認められた。また、酸化亜鉛ナノ粒子のアジュバント作用は、マイクロメートル級の半径を持つ酸化亜鉛粒子のアジュバント作用よりも強いことを明らかにした。このように同じ物質でも粒子径により、そのアジュバント作用が異なることから、ナノ粒子のように新しい技術で創生された大きさの物質については、改めてその毒性などの性質を調査する必要があることが示唆された。Th1サイトカインであるIFN-gamma、Th2サイトカインであるIL-5、Th3サイトカインであるTGF-betaの産生に与える影響についても解析してきたが、評価できる結果は得られておらず、今後さらに詳しく解析していく予定である。 また、Th1/Th2/Th3免疫反応と関係が深い肥満細胞の活性化に対する酸化亜鉛ナノ粒子の作用についても昨年度に引き続き検討を行ったところ、酸化亜鉛ナノ粒子はIgE架橋刺激による脱顆粒反応やロイコトリエン産生を、細胞内情報伝達分子に影響を及ぼすことにより抑制することを明らかにした。
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