研究概要 |
ヒトゲノム・遺伝子の機能解析において重要なことの1つに,一塩基多型(SNP)の解析がある。研究代表者らはこれまでに,SNPの検出法としてポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)に亜鉛サイクレンを導入した新しい遺伝子診断技術(亜鉛サイクレン-PAGE)を開発している。亜鉛サイクレンはDNA中のチミン(T)に結合して,局所的なバブル構造を形成させる(2重らせん構造の局所的融解)。DNA中にミスマッチ塩基対を持つヘテロ2本鎖は,その部位にあらかじめ小さなバブル構造を持つため,亜鉛サイクレンによって誘導されるヘテロ2本鎖の構造変化は,ミスマッチ塩基対を持たないホモ2本鎖よりも大きい。この構造変化の差が泳動度の差となって表れる。ヘテロデュプレックス法との併用により,研究代表者はこれまでにBrugada症候群の患者ゲノムをサンプルとしたSCN5A遺伝子の網羅的なSNPスクリーニングを行い、幾つかの変異を検出することに成功している。この成果は,2007年3月16日に神戸で開催の第71回日本循環器学会総会・学術集会で発表される。 本研究では,SNPを持つグアニン・シトシン(GC)連続配列を人為的に作製し,その変異の検出を試みた。亜鉛サイクレンの作用点はTであるため,変異箇所がGからCへの置換(G-C変異)であっても,その周辺にTさえあれば検出は可能となる。一方,GC連続配列中におけるG-C変異の検出は困難であると予想される。そこで本研究では先ず,GC連続配列(10〜20塩基連続)中の様々な箇所にG-C変異が導入された約200bpのDNAを作製した。そして,これらの変異が亜鉛サイクレン-PAGEによって検出可能であるかを検討した。この結果,その配列中のいかなるG-C変異でも検出できることを確認した。この成果は,2007年3月29日に富山で開催の日本薬学会第127年会で発表される。
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