胎児解毒に関わる薬物動態変動の解明は、安全で有効な薬物療法のための重要課題である。本研究では、妊娠中期一後期における薬物輸送担体、薬物輸送担体の膜局在化に関わる蛋白、及び薬物代謝酵素の発現と機能を調べ、妊娠時期特異的な薬物動態の変動を明らかにすることを目的とした。本年度は以下の項目について検討を行った。 1.ラット胎盤トロホブラスト条件的不死化細胞株TR-TBT及びラットを用いた局在化関連蛋白の発現解析: 妊娠18日由来のTR-TBT及びラット胎盤のcDNAを鋳型とし、局在化関連蛋白としてERMファミリーに属するezrin、radixin、moesinのreal-time PCRを行った。その結果、ezrinの発現量が最も高かった。Ezrinは妊娠14日目において発現量がピークとなり、その後徐々に減少した。Radixin及びmoesinはそれぞれ妊娠18日目及び妊娠14日目において発現量ピークとなった。これらのことから、ERMのうちezrinが胎盤で主要な分子であることが示唆された。 2.免疫染色による胎盤薬物輸送担体局在の解析: Ezrinの局在変動を解析したところ、妊娠12日目では局在は見られず、妊娠14日目において母体側に局在が見られ、局在化は経過とともに進んだ。更に、syncytiotrophoblastのapical markerとしてP-gpとezrinの二重染色を妊娠18日目のラット胎盤において行ったところ、共局在していた。これらのことから、妊娠14日目以降において、ezrinがsyncytiotrohoblastのapica1トランスポーターの局在に影響を与えていると考えられた。 これらの成果は、AAPS Annual Meeting and Exposition(米国薬学会、米国サンアントニオ市)、第127年会日本薬学会(富山市)において発表した。
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