カルニチンは長鎖脂肪酸のミトコンドリア内膜透過に働き、β-酸化に必須な物質である。カルニチンの体内動態はトランスポーターによって調節されており、トランスポーターの実体の1つは有機カルニチントランスポーターOCTN2である。OCTN2の機能欠損マウスであるjuvenile visceral steatosis (JVS)マウスではカルニチン欠乏による心肥大、脂肪肝、および雄性不妊などが生じる。したがって、jvsマウスで観察される疾患はOCTN2の発現が低下した場合も生じると推定される。そこで、本研究では、OCTN2の発現量に影響する因子の同定が必要であると考え、OCTN2の発現制御機構に関する研究を行った。18年度はラットOCTN2の発現が核内受容体の1つであるPeroxisome Proliferator Activated Receptor (PPAR) αにより制御されていることを明らかにし、その成果を論文としてまとめた。19年度はPPARα以外の核内受容体によってもラットOCTN2が制御されているか検討したところ、Pregnane X Receptor (PXR)によってもOCTN2が制御されている事が明らかとなった。さらに、β-酸化の律速酵素であるcarnitine palmitoyltransferase 1が同様にPXRにより制御せれていることを明らかにした。PPARαがOCTN2の発現を正に制御するのに対しPXRはOCTN2の発現を負に制御されている。つまり、OCTN2は脂質代謝に関わる因子により制御されることが予想される。したがって、PPARαとPXR、さらにその他の因子のOCTN2への作用に関する情報の積み重ねが、体内の脂質ホメオスタシス機構の解明や疾病の原因解明につながることが期待できる。
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