研究概要 |
薬物代謝酵素であるaldehyde oxidase(AO)は抗腫瘍剤のmethotrexateなど多くの薬剤の代謝に関与することが報告されている。これらの薬剤を投与する際には、患者個々のAO活性に応じた投与設計が有効と考えられる。N^1-methylnicotinamide(NMN)は、内在性物質であるnicotinamideの代謝物であり、AOによりN^1-methyl-4-pyridone-3-carboxamide(4-PY)及びN^1-methyl-2-pyridone-5-carboxamide(2-PY)へと酸化され、常時尿中へと排泄される。成人を中心としたAO活性の検討では尿中全排泄量に占めるNMN酸化体の比率(RP)と肝NMN酸化活性の間に良好な相関性があり、in vivoのAO活性を予測する方法として応用されている。これにより、成人でのAO活性測定が行われているが、新生児・乳幼児においてのAO活性については不明である。本研究では、健常な小児におけるAO活性の変動に及ぼす発育の影響について検討を行った。採取した尿中のNMN、2-PY及び4-PY濃度を測定し、RPを用いて個々のAO活性を推定した。なお、検討の対象は健常児であり、その早朝尿を用いた(101名,258検体)。その結果、健常な新生児・乳幼児のin vivo AO活性(RP値)と日齢(r=0.711)、体重(r=0.651)、体表面積(r=0.548)、肝容量(r=0.585)のいずれの成長因子の間においても有意な相関が観察された。AO活性は、出生後より上昇が認められ、1歳付近で成人値に達した。AO活性が成人の活性に達していない新生児・乳児やAO活性の低い患者にAOで代謝される医薬品を投与する際には、予め個人のAO活性を推定し投与量を決定する必要があると考えられる。
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