生体機能には神経活動をはじめホルモン、代謝酵素などの分泌や生合成の他、免疫機能や体温、排泄機能などにおいても日周リズムを中心とする様々な周期的現象が認められる。このような生体機能の日周リズムに伴い、病態やその治療目的で使用される薬物の効果、体内動態は時間依存的に変化することが考えられる。事実、多くの薬物について、その効果や毒性は投薬(服薬)する時刻によって異なることが認められている。 一般に薬物の効果および毒性の程度は、作用部位における薬物の濃度と作用部位の薬物に関する感受性とによって決定される。血中薬物濃度あるいは作用部位における薬物濃度は、投与された薬物の吸収、分布、代謝、排泄の各過程によって規定されるが、生体機能の日周リズムに起因して、これら各々の過程において時間依存的な変化が認められ、血中および作用部位における薬物濃度は投薬する時刻によって変化する。また、作用部位の薬物に対する感受性(受容体数、標的酵素活性など)にも時間依存的な変化が認められている。従って、作用部位における薬物の濃度と作用部位の薬物に対する感受性の両側面における時間依存的変化が、薬物活性の日周リズムの原因となっている。 以上のことから、投与量および血中濃度および効果の関係を定量的に明らかにするためには、作用部位における薬物の濃度と作用部位の薬物に対する感受性の両側面における時間依存的変化を考慮する必要があると考えられる。 本研究では癌性疼痛に用いるフェンタニルの作用部位における濃度と作用部位の感受性の両側面における時間依存的変化を考慮したPharmacokinetics/Pharmacodynamics (PK/PD)モデルの確立を目的とし、研究を行っている。 本年度は癌性疼痛モデルマウスを作製し、鎮痛効果を測定した。癌性疼痛モデルマウスにおける鎮痛効果、μ-opioid receptor機能、生体内濃度の日周リズムの検討は次年度に行う予定である。
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