LacZレポーター初代トランスジェニックマウス胚を用いたエンハンサー解析により、頭部および頚部神経管でのシス調節領域を、マウスとヒトで保存されている1.1kbの領域に同定した。その発現は胎生9〜9.5日目の神経管上皮の主に背側領域に限局し、腹側の間脳・中脳および眼胞にも認められ、In situ hybridizationの結果とよく一致した。また、1.1kbのシス調節領域は、前脳内側部、眼胞でのシス調節領域と前脳・中脳の背側部、腹側中脳でのシス調節領域に分けられ、中脳背側部を除く神経管でのプロモーター活性があることも明らかとなった。興味深いことに、神経堤細胞、とりわけ心臓神経堤細胞に弱いLacZの発現が認められ、LacZ活性の残存と考えられた。この所見は、Fbp1が神経堤細胞由来の組織・器管の形成に役割を果たしていることを強く示唆しており、葉酸投与で心臓流出路の異常が減少する疫学結果と合致する所見である。Fbp1発現細胞の細胞系譜の解析のために、Fbp1シス調節領域を用いてCre-ERT2リコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスの系統を樹立した。このマウスとRosa26マウスとを交配し、胎生9.5日目にタモキシフェンを投与したが、LacZの発現が認められなかった。これは、トランスジェニックマウスにおけるCre-ERT2リコンビナーゼの発現レベルが十分でないことが原因と考えられた。代わりに、Rosa26オスマウスと交配したメスマウスから受精卵を取り出し、Fbp1のシス調節領域下にCreリコンビナーゼ発現するコンストラクトを注入後、胎生9.5日目にLacZの発現を検討した。マウス胚および卵黄嚢全体でLacZの発現が認められ、同定したシス調節領域は胎生初期からFbp1の発現を調節していることが明らかとなったが、当初計画していたFbp1発現細胞の細胞系譜の解析は技術的に困難であった。
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