カテプシンDは代表的なリソソームプロテアーゼであり、種々の神経変性疾患への関与が指摘され、神経細胞においてカテプシンDは非特異的分解酵素という役割以外に、非常に重要な機能を有していることが考えられる。カテプシンD欠損マウスは、神経細胞内に特有のリソソームが蓄積し、神経性セロイドリポフスチン蓄積症(NCL)と類似した症状を呈して生後26日で死に至る。本研究課題では成体脳におけるカテプシンDの役割を解明することを目的とし、本年度は中枢神経系特異的なカテプシンD欠損マウスの作製と、その過程で得られたカテプシンD低発現マウスの解析を行った。Intron2にneo遺伝子カセットを持ったカテプシンD低発現マウスはメンデルの法則に従って誕生し、生後約28日から30日で死亡した。同マウスはカテプシンDの遺伝子発現や酵素活性が野生型の約30%しかなく、カテプシンD欠損マウスと同様NCLの症状を呈した。また、大脳皮質、海馬錐体細胞、小脳プルキンエ細胞においてTUNEL陽性の細胞死が観察された。NCLの神経症状を呈しているにもかかわらず、約20%のカテプシンD低発現マウスはNCLに特徴的な小腸壊死が観察されなかった。また、カテプシンDヘテロマウスの酵素活性は、野生型と比べてその約50%である。しかし、ヘテロマウスの表現型は野生型と全く同じであることから、これらの結果は、NCLの発症とカテプシンDの発現量との間に相関関係、即ち、約30%から50%の発現量の間に閾値が存在することを示唆している。 カテプシンD:floxマウスとNestin-Creマウスの交配により、神経系特異的カテプシンD欠損マウスが誕生し、現在その表現型の解析を行っている。
|