平成18年度の検索において我々は、周皮細胞のVEGF-A産生による新生血管内皮の発芽誘導の可能性を微細構造レベルで追跡するため、血管新生部を含む組織を樹脂包埋して超薄切片や準超薄切片上で免疫染色を行う手技の開発を行ってきた。具体的な手続きとしては、低温重合後に脱樹脂の出来るTechnovit 9100 NEW、低温紫外線重合を行うLoWicryl K4M、50℃の熱重合を行うLR-Whiteの3種の水溶性樹脂を用いて、血管内皮細胞(CD31)、周皮細胞(PDGFR-beta、Desmin)、およびVEGF-Aに対する抗体を用いて酵素抗体法の間接法にて染色性の比較を行った。 比較の結果、LR-White包埋切片が3者中最も染色性に優れており、使用したすべての抗体がシグナルを検出できたものの、同様の抗体希釈率で染色した凍結切片に比べると、非常に感度が弱いことは否めなかった。LR-White包埋では他の樹脂に比べ抗原性の保持は良好であると考えられるが、凍結試料に比べるとかなり劣るものと思われた。また、水溶性とはいえ樹脂に包埋された状態で抗原抗体反応を行うため、抗体の浸透も凍結試料に比べると困難であると思われた。このような問題点を克服するため、現在、LR-White切片での免疫反応の感度を増幅する試み遂行中である。先ず最初に、方法を間接法からABC(avidin-biotin-peroxidase complex)法、IGSS法(immunogold-silver staining)、TSA法(Tyramide Signal Amplifcation)等の方法に変更することから着手し、遅くとも来年度全般には樹脂切片による新生血管壁の完全な可視化を目指し、さらなる検索に進んでいきたいと考えている。
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