研究課題
肺サーファクタントは脂質と蛋白の複合体であり、肺胞の気層-液層の界面における表面張力の維持、また肺胞の虚脱、肺拡張不全を防ぐ上で必須の物質である。サーファクタントは肺胞II型細胞において合成され、層板状の顆粒であるラメラ体に蓄積された後、肺胞腔内ヘエキソサイトーシスにより分泌されていると考えられている。肺サーファクタントを構成する脂質はDPPC、 DPPGを主とするリン脂質であり、蛋白はsurfactant protein(SP)-A、 SP-B、 SP-C、 SP-Dなどが知られている。またこれらsurfactant proteinの遺伝子異常により、respiratory distress syndrome(RDS)をはじめ重篤な肺機能疾患を引き起こされる。ラメラ体は先に記載したように脂質を主な構成成分とするサーファクタントを層状に蓄えた分泌顆粒であることから、ABCA3がサーファクタントの形成・分泌に関与していると考えられているが、ABCA3の生理学的な機能は、輸送基質の同定を含め未だ不明な点が多い。本研究では、ABCA3遺伝子欠損マウスの作製に成功した。このKOマウスから肺組織また肺胞洗浄液から脂質を抽出しLC/MS解析を行った結果、パルミチン残基を側鎖に少なくとも一つは持つホスファチジルコリン(PC)とホスファチジルグリセロール(PG)が、野性型に比してKOマウスの肺間質溶液中において、特異的に減少していることが明らかとなった。さらに電顕解析を含めた病理学的解析を行った結果、肺サーファクタントを溜め込む層板顆粒であるラメラ体の形態形成に異常をきたしていたことから、肺胞2型細胞内においてラメラ体の限界膜上に局在するABCA3が肺サーファクタントの主成分であるDPPCとDPPGを膜輸送している事、さらにラメラ体の形成にも関与することが明らかとなった。
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