CO並びにヘムの体内時計制御における生理機能を明らかにする目的で、ALAS-N、mCRY1等の種々の遺伝子改変マウスの、明暗及び恒暗条件下での輪回し活動を指標とした活動リズムの測定を行った。その結果、mCRY1の遺伝子改変マウスが特徴的な表現型を示す事が判明した。すなわち、mCRY1を全身的に過剰発現させたトランスジェニック(Tg)マウスは比較的マイルドな表現型を示す(明暗条件下では野生型マウスと比べて活動開始時刻が数時間程早まる;恒暗条件下でやや短周期のフリーランリズムで活動する場合がある)のに対し、ヘム結合モチーフに変異を導入したmCRY1の全身性過剰発現Tgマウスは特異な表現型を示す(明暗条件下では明期においでも顕著な活動が観察される;恒暗条件下ではリズム分割を伴った極めて長周期の(約28h)フリーランリズムで活動する)事が明らかになった。明暗条件下の両Tgマウス肝臓でのmPER2、mDBPのmRNAの発現リズムをリアルタイムPCRで測定したところ、mCRY1 Tgマウスでは、振幅がやや小さくなるが野生型マウスとピーク位置は変らなかったのに対し、モチーフ変異型mCRY1 Tgの場合は振幅の極めて小さく、また形状の異なったピークの発現リズムが見られた。これらの結果は、ヘムによるCRYの制御が、体内時計の明暗周期への同調及び周期の制御、さらに内的同調において重要な役割を果たしている事を強く示唆している。現在、このCRYのモチーフ配列を介してのCOの体内時計制御機構の検討を、in vitroで行っている。ALAS-N全身性過剰発現マウスは、やや長周期のフリーラン周期を示す傾向が観察され、さらに確かな結論を得るべくマウスの個体数を増やして、上述のCRY Tgマウスと共に活動リズムの測定を継続している。また、NPAS2、HO-1の種々の遺伝子改変マウスの作製も進行中である。
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