|
下垂体後葉ホルモンのオキシトシンとその受容体は、社会行動と親和行動に重要であることが示されている。オキシトシン受容体遺伝子欠損マウスには母性行動低下が認められた。一方で幼若期のオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、母親から隔離したときに仔が発する超音波発声がほとんど認められなかった。これらの結果は母仔親和行動において、母仔共にオキシトシン受容体が重要な因子であることを示している。しかし、これらの行動についてのオキシトシン/オキシトシン受容体系の作用機序についてはまだ明確でない部分が多い。そこで本年度、本研究では母仔愛着行動においてオキシトシン/オキシトシン受容体系が活性化される脳の部位についての解析を行うことを目的とした。
母性行動誘発時にオキシトシン/オキシトシン受容体系が機能する脳部位を明らかにする目的で、神経活動マーカーであるc-Fosの免疫組織化学による解析を行った。仔に暴露して超音波発声またはニオイによる母性行動誘発刺激を与えたオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスでは、外側中隔野、内側視索前野における神経活動が野生型に比べて顕著に少ない様子が認められ、これが母性行動低下に影響していることが示唆された。また、母仔分離によって仔マウスが母親への求愛行動を示すときにOXT/OXTR系が機能する脳部位を明らかにする目的で、オキシトシンとc-Fosの二重免疫染色による解析を行った。母親と同腹子から隔離した生後7日目のC57BL/6J仔マウスにおいて、視索上核のオキシトシン産生ニューロンに神経活動マーカー陽性のものが多い傾向が認められ、室傍核のオキシトシン産生ニューロンにはその傾向は認められなかった。さらに、超音波発声の解析装置を導入し、実験系を検討中である。
|
