研究課題
マウス膵臓由来の培養β細胞であるβTC6細胞において、ニコチンがイオンチャネル型のニコチン性アセチルコリンレセプターのα3β4サブタイプを介して細胞膜の脱分極、細胞内カルシウムイオン濃度([Ca^<2+>]_i)の上昇そしてインスリン分泌の促進を引き起こすことを明らかにし、文献として発表した(Mol.Pharmacol.69(3),899-907)。この研究成果から、初代培養膵臓ランゲルハンス島(膵島)にもニコチン性レセプターが存在・機能している可能性があると考え、まずマウスとラットから単離した膵島におけるニコチン性レセプターのα、βサブユニットmRNAの発現の有無をRT-PCRを行って調べた。その結果、マウス膵島ではどのサブユニット遺伝子の発現も見られず、さらに、マウス膵島にニコチン及びニコチン性レセプターのいくつかのアゴニストを作用させて[Ca^<2+>]_iに変化が見られるかどうかを調べたが、全く効果は見られなかった。したがって、マウスの膵島ではニコチン性レセプターは全く存在・機能していないということが強く示唆された。一方ラットでは、RT-PCRによりα3、α5、α7の3つのレセプターサブユニットのmRNAの発現を確認できた。したがって今後は、このRT-PCRの結果の再現性とラット膵島の[Ca^<2+>]_iにおけるニコチン性レセプターアゴニストの効果の有無を調べていく予定である。βTC6細胞におけるニコチン性レセプターのその他に機能についても検討した。ニコチン性レセプターのα3サブユニットに対するポリクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った結果バンドが検出されたことから、βTC6細胞でニコチン性レセプターがタンパク質レベルで存在していることが明らかとなった。また、ニコチンを1-100μMで1-4日間作用させてβTC6細胞の増殖に影響が出るかどうかを調べたが、細胞数についてはほとんど変化は見られなかった。今後は、TNF-αなどのサイトカインによって引き起こされるβ細胞のアポートシスに対する作用などを調べていく予定である。
すべて 2006
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Molecular Pharmacology 69(3)
ページ: 899-907