研究概要 |
グリセロリン脂質であるボスファチジルイノシトールとそのリン酸化代謝産物であるイノシトールリン脂質(PIs)は、形質膜や細胞内オルガネラの脂質二重膜構成因子として膜の構造を規定するのみならず、脂質代謝・分解酵素により脂質性シグナル分子へと変換され、細胞内シグナル伝達においても重要な役割を果たしている。他のリン脂質の親水性部位とは異なり、PIsのイノシトール環は3,4,5位水酸基に可逆的なリン酸化を受け、それらのリン酸化部位の組み合わせによって7種類のPIsが生体内に存在する。個々のPIsは異なる特異性で種々のタンパク質に結合し、それらの酵素活性や細胞内局在を調節することにより、多様な細胞応答を制御している。本研究ではまだ解析の進んでいない微量PIsの生理機能、特に血球細胞における機能に着目した解析を行うことを目的としている。 微量PIs代謝酵素の全身性欠損マウスは胎生致死となるため、Cre-Lox Pシステムを利用した条件付欠損マウスを作製した。このマウスと、CD4、CD19またはlysozymeのプロモーター制御下にCreリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウスとの交配を行い、T細胞、B細胞、顆粒球特異的にPIs代謝酵素を欠損するマウスを作製した。これまでに、生体におけるT細胞、B細胞、顆粒球の数や分化・成熟について細胞表面マーカーを用いたフローサイトメトリー解析を行っているが、野生型との差は認められない。現在、感染実験や、その他のPIs代謝酵素欠損マウスとの交配を進めている。
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