本研究は、申請者が以前に同定したCLICK-III/CaMKIγ(以下CLICK-III)の、CaMキナーゼファミリーの中で唯一パルミトイル化、プレニル化という、複数の脂質修飾を受けラフトへ局在するという性質に着目し、本キナーゼの神経系における役割を明らかにすると同時に、脂質修飾によるカルシウム-CaMキナーゼシグナリングの調節という新たなシグナリング制御機構を提示することを目的とする。本年度は、目的を遂行するために下記の点を明らかとした。 1、神経細胞初代培養系を用いた遺伝子発現系を確立し、本キナーゼが神経細胞においてもラフトへ局在すること、ラフト局在がCLICK-III脂質修飾によって制御されていることを生化学的、細胞生物学的手法により明らかとした。 2、初代大脳皮質神経細胞培養系を用いたRNAi法を確立し、本キナーゼの神経細胞形態制御における役割を解明した。 3、更に、神経細胞形態制御能が個体においてどのような意義を有するのか検討するためのノックダウン用ウイルスベクターの作出を行った。 4、本キナーゼを介した神経細胞形態制御に関与する上流下流情報伝達系の解明を進め、複数の候補分子の同定を行った。 5、CLICK-IIIの各種脂質修飾欠失変異体を用いて、神経細胞形態制御機能における脂質修飾の重要性を示した。 以上の研究成果は、平成18年度に開催された第79回日本生化学会ならびに第29回日本神経科学大会にて報告した。
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