ラットの脳、肝臓及び小腸から、クロロホルムとメタノールを用いて全脂質を抽出した後、アセトン分画法により単純脂質と複合脂質に分画した。オーファン受容体を恒常的に発現するCHO-K1細胞株を20種類あまり樹立し、サイトセンサー法を用いて受容体活性化能を調べた。その結果、単純脂質によって特異的に活性化される受容体Aと複合脂質によって特異的に活性化される受容体Bを同定した。さらに単純脂質をC18逆相クロマトグラフィーで分画し、活性画分同定後、質量分析計で解析することで、受容体Aのリガンドの構造決定に成功した。この新規脂質メディエーターは、生体内での存在は示唆されていたが、生理活性の報告は少なく、生体内での新たな生理機能を解明するための重要な知見と考えられる。 また、ロイコトリエンB4をリガンドとするBLT1はGiとG16という機能の異なる2種類のGタンパク質を活性化するが、BLT1のGタンパク質共役部位の同定を行った。BLT1の細胞内ループの4アミノ酸を一単位として、全てアラニンに置換した変異受容体を合計14個作成し、おのおのの変異型受容体の細胞内シグナル活性化を観察した。第三細胞内ループのアミノ末端に存在するi3-1に変異を加えたBLT1は、G16を正常に活性化するが、Giは全く活性化出来ず、この部位でGiタンパク質を認識していることが明らかとなった。さらに分子モデリングから、この部位がヘリックス5の末端に位置することを同定した。またBLT1の高親和性構造の維持にはGiタンパク質との結合が必要なことを明らかにした。
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