研究概要 |
ラットの脳、肝臓及び小腸からクロロホルムとメタノールを用いて全脂質を抽出し、さらにアセトン分画法により単純脂質と複合脂質に分画した。オーファン受容体を恒常的に発現するCHO-K1細胞株を20種類あまり樹立し、サイトセンサー法を用いて受容体活性化能を調べた。各臓器由来の脂質の受容体活性化能を検討した結果、ラット小腸のアセトン可溶画分がロイコトリエンB4(LTB4)の低親和性受容体として同定されたBLT2を活性化できることを見出した。高速液体クロマトグラフィーと質量分析計を用いた解析を行い、シクロオキシゲナーゼ産物である12-ヒドロキシヘプタデカ-5Z,8E,10E-トリエノイック酸(12-HHT)が、BLT2の高親和性リガンドであることを同定した。12-HHTは、リガンド結合実験、GTPγS取り込み実験、細胞内カルシウム上昇反応、細胞走化性のいずれにおいても、LTB4よりも1桁以上低い濃度でBLT2を活性化した。12-HHTの産生に関わるCOX-1の遺伝子欠損マウス由来の小腸の脂質は、BLT2活性化能が有為に低下していた。さらに、マウス骨髄由来マスト細胞に機能的なBLT2が発現し、12-HHTに対して顕著な走化性を示すことを明らかにした。これまで12-HHTはトロンボキサン生成時の単なる副産物として考えられていたが、BLT2アゴニストとしての生体機能があることが明らかにすることができた。
|