二次リンパ組織の発生や維持にはリンフォトキシンb受容体(LTbR)シグナルによるストローマ細胞の特殊化が重要でる。LTbRの下流ではセリン・スレオニンキナーゼNIKを介し転写因子Re1B/p52複合体の活性化に至る、いわゆるNF-kBNC経路が様々な遺伝子発現を制御していると考えられるが、リンパ組織ストローマ細胞内における各分子個々の機能や相互の連携に関しては未解明の問題が多く残されている。NC経路によって直接発現が誘導される標的遺伝子は現在までに数例が知られているのみで、この経路の活性化がストローマ細胞に具体的にどのような変化をもたらしているのかは不明である。我々はマウスリンパ節ストローマ細胞株BLSを用いて種々のプロテアーゼ阻害因子の発現を網羅的に検討した結果、LTbRシグナル特異的に強く応答する標的遺伝子としてSerpin-Albを同定した。またBLS細胞にNIKを過剰発現させるとこの遺伝子が強制的に誘導されることを確認した。Serpinファミリー因子群は数多くの種類が知られているが、種々のプロテアーゼに対して阻害効果を示し、免疫系においても細胞遊走やアポトーシス抑制等の様々な作用が報告されている。データベース上ではヒト、マウスともにゲノム中に遺伝子重複の結果、複数のA1タイプSerpin(Ala-e)遺伝子が連なったクラスター領域が存在していことが知られている。興味深いことに、各サブタイプの遺伝子構造およびプロモーター領域の配列は高度に保存されているにもかかわらず、Alb以外のサブタイプについてはLTbRシグナルによる発現誘導が全く認められない。詳細な解析の結果、Albにのみ数十kb上流に代替プロモーター領域/Exonlbが存在し、この領域がLTbRシグナルの制御下にあった。したがって、Serpin-AlbがNC経路の標的遺伝子のひとつとして特別な制御を受け、ストローマ細胞の機能に直接関与している可能性が想定される。
|