In vitro で繊毛形成を誘導した時の繊毛上皮における遺伝子発現の変化を網羅的に解析する事で、繊毛形成および中心体複製の制御に関わる因子の探索を行った。繊毛上皮の発生過程における種々のタイミングで特徴的な遺伝子発現パターンを示す遺伝子を複数単離し、中心体とcentriolar satellitesの双方に局在する新規蛋白と、繊毛の先端に局在する新規蛋白について解析を進めた。 1)新規蛋白p110は繊毛細胞および精子に特異的に発現し、繊毛を持つ単細胞生物から哺乳類まで幅広く保存されている蛋白であった。 p100はcentriolar satellitesを構成するPCM-1蛋白と直接結合しcentriolar satellitesに局在するだけでなく、基底小体のproximal側にも存在する事を示した。また、p100の過剰発現によりcentriolar satellitesがdisassembleされる事を示した。これらの結果はp110が繊毛形成に必須の蛋白である事を強く示唆している。 2)新規蛋白sentanが繊毛の先端に局在する事を示した。繊毛のaxonemeを構成する微小管のうち外側の微小管はdoublet構造を取っているが、先端付近ではB tubuleが先に終止し、A tubuleのsingletが先端まで伸びて、central微小管と結合している。免疫電顕によりsentan蛋白がsinglet A tubuleと細胞膜を繋ぐ構造に局在する事を示した。また、sentan蛋白が細胞膜脂質成分のうちphosphatidylserineと特異的に結合する事を示した。これまで、繊毛の先端構造を作る蛋白は全く同定されておらず、sentanが初めて同定された蛋白となる。
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