Doc2はC2領域と呼ばれるCa^<2+>およびリン脂質結合領域を2つ有するタンパク質である。Doc2アイソフォームのうち、Doc2αは神経特異的に発現し、神経興奮に伴う伝達物質のシナプス間隙への放出という調節性分泌にCa^<2+>センサーとして働くことが報告されている。一方、Doc2βは普遍的に発現しているが、その機能は全く明らかにされていない。本研究では、神経細胞以外でのDoc2の機能を見出すことを目的として、アレルゲンに応答してヒスタミン等の生理活性物質を放出するマスト細胞の調節性分泌にまず着目した。ラット由来マスト細胞株RBL-2H3細胞におけるDoc2の発現をNorthern法により検討したところ、意外にもDoc2βではなくDoc2αが発現していた。Doc2αは神経細胞において、シナプス小胞の開口放出に必須なタンパク質Munc13-1と結合して機能しているが、最近、、そのアイソフォームであるMunc13-4が造血幹細胞由来の血小板、細胞障害性T細胞、マスト細胞等に発現し、それらの調節性分泌に働いていることが相次いで報告されている。そこで、免疫沈降法および免疫蛍光染色法にてDoc2αとMunc13-4の関係を検討したところ、両者が結合すること、およびRBL-2H3細胞の分泌顯粒上で両者が共局在することを見出した。また、RBL-2H3細胞にDoc2αの欠失変異体を導入すると調節性分泌が阻害され、その阻害はMunc13-4の導入により回復することが明らかとなつた。更に、Doc2α欠損マウスから調製した骨髄由来マスト細胞では、野生型マウスから調製したものと比較して調節性分泌が顕著に低下していた。これらの結果はDoc2αがMunc13-4と結合してマスト細胞の調節性分泌に働いていることを強く示唆する新知見であり、現在論文投稿および学会発表の準備を進めている。
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