研究概要 |
転写因子NF-κBは,炎症やアポトーシスといった様々な生命現象に関与する重要な転写因子である。本研究では,NF-κBの活性制御についてさらに解析を進めるために,NF-κBサブユニットの一つp65をbaitにyeast two hybridスクリーニングを行い,新規相互作用分子としてAKIP 1を得,その作用機構について解析を行った。まず,p65とAKIP1と結合することを,in vitroとin vivoで証明し,さらにAKIP1を強発現させることによりNF-κBの核移行が促進されることを明らかにした。また,AKIP 1によりPKAcによるp65のSer276のリン酸化が亢進しており,この機構にはリン酸化が関与することが考えられた。また,NF-κB依存性転写を行う代表例としてHIV-1 LTRによる転写活性化についてルシフェラーゼアッセイで調べたところ,AKIP 1の過剰発現によりTNFによるHIV-LTRの転写活性が増強された。さらに,siRNAによってAKIP 1をノックダウンすることにより,LTRの転写活性は阻害され,NF-κBの転写活性化にAKIP 1が必要であることが明らかになった。以上の結果から,AKIP 1はPKAcによるp65のリン酸化を通じてNF-κB転写活性を正に制御することが示唆された。本分子はNF-κBの活性を負に制御する分子であるとも報告されているため,AKIP 1が刺激や細胞腫などの環境に応じてNF-κBの転写活性を正にも負にも作用するマスター分子である可能性があることが考えられる。今後慎重に検討を進める必要がある。 さらにNF-κBの制御機構を解析するために新規NF-κB阻害化合物の探索を行い,ホオノキに含まれるマグノロールがNF-κBの核移行を阻害し転写活性を抑えることを明らかにした。
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