昨年までに、ヒト羊膜中には骨、軟骨、脂肪細胞への分化能を有する間葉系幹/前駆細胞が存在することを明らかにし、それらの細胞はCD90、CD166、NGFRのいずれかの細胞表面抗原を利用することによって、ヒト羊膜より効率良く回収できる可能性を示唆することができた。本年度は、これらのマーカーのうち、CD90およびCD166を組み合わせる事によって、さらに間葉系幹/前駆細胞を純化することが可能かどうかを検討した。ヒト羊膜中のCD90陽性細胞およびCD166陽性細胞の割合は検体によって大きく異なり、それぞれ19.3±7.1%、13.3±5.3%であったが、これら2つのマーカーを共に発現している細胞は存在しないことが明らかになった。このことから、ヒト羊膜中に存在する間葉系幹/前駆細胞の純化においてこれらのマーカーを組み合わせて使用しても、それぞれのマーカーを単独で使用する以上の効果は得られないことが明らかになった。一方、in vitroで培養・増殖させた分化能を持つヒト羊膜由来細胞はほぼ全てCD90およびCD166を共に発現していることから、培養によってヒト羊膜中には存在しない表現型を持つ細胞が出現してくることが示唆された。in vitroにおいて培養した間葉系幹/前駆細胞の発現するマーカーを解析することによって得られた結果を元に、生体内における間葉系幹/前駆細胞を純化するためのマーカーを探索することはそれほど有効ではない可能性が考えられ、間葉系幹/前駆細胞をヒト羊膜より純化するためには分化能を反映するマーカーの探索を行う必要があることが示唆された。
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