研究概要 |
本年度は以下に示す研究を実施したので報告する。 1.循環器系にも発現するニューロテンシン受容体(NTS1)に対し、今までに報告のないペプチド画分に活性を見出し、精製を遂行した。ラット小腸300グラムの抽出物からNTS1の活性化に伴う、細胞内Ca^<2+>濃度上昇を指標に精製を行った。その結果、約10ピコモルのペプチドを単一に精製した。質量分析計にて測定した結果、分子量は2116.4であった。また、プロテインシークエンサーによりアミノ末端から15残基のアミノ酸配列を決定し、得られた配列はニューロテンシン前駆体中の131番から145番目に一致した。精製したペプチドにはNTS1の内因性リガンドであるニューロメジンNが含まれていたため、プロセシングが不十分であったにも拘らず、NTS1に対し活性を与えたことが考察される。 2.循環器系に発現する3種類のオーファン受容体(GPR19,GPR37L1,PGR7)発現細胞を用いて新規生理活性ペプチドの探索を遂行した。各種動物組織から調製したペプチド抽出物を細胞に添加後、細胞内Ca^<2+>濃度上昇についてFLIPR(現有設備)を用いて測定することにより新規ペプチド性リガンドを探索した。しかしながら、受容体の活性化に伴う特異的な活性を見出すことはできなかった。原因として、リガンドと予想されるペプチドの組織含量が低いこととCa^<2+>ではない別のセカンドメッセンジャーを介した活性化であることが考察される。リガンドが結合した受容体は、細胞内2次メッセンジャーとしてCa^<2+>のみならずcAMP濃度変動、受容体のインターナリゼーションが知られている。今後、リガンド結合に伴うcAMP濃度変動及び受容体のインターナリゼーションを活性の指標に用い、探索・精製を遂行する。また、目的とするリガンドの組織含有量が低い事も考えられるため、アッセイに使用するサンプルを濃縮、添加することで受容体の活性化によって引き起こされる特異的な活性を探索する。
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