1.個体レベルにおいて、神経芽腫誘導に対するMKの関与の検討 MKノックアウトかつMYCNヘミ接合体マウスの表現型を検討したところ、まずMK^<+/+>マウスは10週齢過ぎで大部分が神経芽腫を発症し、20週齢時に生存していたのは20%足らずであった。一方MK^<+/->マウスは発症が3週ほど遅れ、最終的な生存率もMK^<+/+>マウスより2倍程度高かった。MK^<-/->のマウスについては評価数が少ないため結論を得るには至っていない。しかしここまでの結果から、MYCNによる神経芽腫の発症と進行にMKが関わっている可能性が強く示唆される。一方、MYCN Tgマウスで腫瘍が発生・増大する過程におけるMKの発現を調べたところ、MKは初期から末期に至る腫瘍で強く発現しており、MK受容体やMK標的遺伝子の発現も伴っていた。腫瘍化前の腹腔神経節においても既にMKが発現していたことを考え合わせると、やはりMKが神経芽腫の発生と進行の両方に関与している可能性が高く、これは先のマウスの表現型とよく一致している。 2.分子レベルでのMYCNとMKの関係の検討 両者のヒエラルキーを検討する為に神経芽腫細胞株を用いたリポーターアッセイを行ったが、トランスフェクション効率が悪い、元々MKのプロモーターがある程度活性化している細胞株が多いといった問題点から、明確な結論を得る事はできなかった。現在は、神経芽腫由来でない一般的な細胞株を試している。 3.神経芽腫のモデルとしてのMYCN Tgブタの作成 TH-MYCN遺伝子が組み込まれたブタ胎児由来の繊維芽細胞クローンを複数単離し、MYCN mRNAの発現と導入されたコピー数を確認した後、共同研究者である農業生物資源研究所の大西彰先生のもとで核移植を行った。まだ結果は出ていないが子供が生まれてこないこともあり得るため、引き続き別の繊維芽細胞クローンの作製を試みている。
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