研究概要 |
ミトコンドリア依存性の高い組織では活性酸素による障害からミトコンドリアを保護し,その機能を維持することが重要である。ミトコンドリア機能の維持には,ミトコンドリアで産生される活性酸素(O_2^-)の効率的な消去が重要であり,ミトコンドリアへ可逆的に局在するスーパーオキシトディスムターゼ(SOD1)とミトコンドリア機能との関係が注目された。前年度までにミトコンドリア機能障害とSOD1のミトコンドリア局在は密接な関係にあることが示唆された。また,カルニチンはミトコンドリア機能障害を軽減し,SOD1のミトコンドリアからの遊離も抑制することを明らかにした。本年度は家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の病態発症における変異SOD1とミトコンドリア機能の関係を解析するため変異SOD1を有するG93A SOD1-FALSモデルマウス(FALS Tg)を用いて病態発症におけるミトコンドリア障害の関与を検討した。FALS Tgの肝臓よりミトコンドリアを単離し,ミトコンドリア機能の変化および活性酸素産生能を解析した。また,発症後FALS Tgの脊椎および筋を用いてミトコンドリアDNA(mt-DNA)変異解析を行った。その結果,病態の進行に伴いミトコンドリア機能は低下し活性酸素産生量は増加した。また,病態発症後のFALS Tgの脊椎および筋ではmt-DNA変異が加速していた。以上の結果より,変異SOD1の存在は直接的もしくは間接的に生体内ミトコンドリア機能障害を引き起こしmt-DNA変異を加速することが示唆された。変異SODの存在によりどのようなメカニズムでミトコンドリア機能障害が引き起こされるのかは不明であるが,現在FALSTgの皮膚より繊維芽細胞を分離培養し,様々なストレス下における変異SOD1とミトコンドリア機能の関係について解析を進めている。
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