研究概要 |
本研究では異染性白質ジストロフィー(MLD)の神経症状を非侵襲的に治療する新しいアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの開発を目的とし、本年度は以下のような研究を行った。 1.新規AAVベクターの作製 1)Tat-アリルスルファターゼA(ASA)キメラの作製 細胞移行性のあるTatペプチドをASAcDNAのC末端に挿入しTat-ASA発現AAVベクターを作製した。 2)self complementary AAVベクター(scAAV)の作製 Tat-ASAキメラを発現するscAAVの作製を行った。 3)各種サブタイプAAVベクターの作製、濃縮、精製 ルシフェラーゼを発現する1型、4型、5型、6型、7型、8型のAAVベクターを作製した。AAVベクターの濃縮精製法としては、1/2飽和硫安沈殿法にて粗ウイルス分画を沈殿させた後、Iodixanolを用いて連続密度勾配遠心法により濃縮精製を行った。 2.新規AAVベクターの評価 1)Tat-ASAキメラ発現AAVベクターの機能的評価 Tat-ASAキメラ発現AAVベクターの濃縮精製したウイルスが機能的に働くかどうか培養細胞(HeLa,C2C12)に遺伝子導入し、ウエスタンブロット、ASA活性の測定を行ったところ目的とするバンド、及びASA活性の上昇を認めた。また、self complementary AAVベクターは一般のAAVベクターよりも10倍以上発現高率が良かった。 2)各種サブタイプAAVベクターの評価 ルシフェラーゼを発現する1型、4型、5型、6型、7型、8型のAAVベクターを静注し、血液脳関門(BBB)を通過するAAVベクターを検索中である。 3.ASAアッセイ系の確立 ASAの抗体を用いてASAのELISAを確立した。 今後は一番発現効率の良いサブタイプのTat-ASAキメラ発現AAVベクターを作製し、MLDモデルマウスに血中或いは脳室内に投与し、治療効果の検討検討を行っていく予定である。
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