研究概要 |
本研究は,国内外の摂食障害遺伝子研究で初の(マイクロサテライトマーカーによる)ゲノムワイド相関解析で同定した拒食症感受性候補領域を対象にSNP関連解析を行い,疾患感受性SNPを同定することを目的としている。今年度は,16q12に位置するTOX3遺伝子領域(325kb)の35SNPsおよび1q32に位置するNR5A2/ZNF281遺伝子近傍領域(345kb)の51SNPsについてSNPタイピングを実施した。摂食障害患者456例(拒食症(AN)331例と過食症(BN)125例)とコントロール872例を対象に,TaqManアッセイによりタイピングデータを取得した。関連解析の結果,TOX3遺伝子イントロン内に位置する6個のSNPについてANとの関連が検出された(アレル頻度に対するχ^2検定P-value0.023〜0.0072)。これらのSNPとBNとの関連は認められなかった。TOX3(TOX high mobility group box family member3)はその発現パターンやコードされるタンパクについての既知情報から脳神経系での機能が推測される興味深い遺伝子である。昨年度までの解析結果から,CNTN5遺伝子イントロン内(11q22)ならびに SPATA17遺伝子の3'下流(1q41)に,ANとの関連を示すSNPを見出しており,今後これらの3つの遺伝子領域のAN感受性SNPについて,独立な日本人AN患者集団を対象とした相関解析を行い,再現性を確認することが重要である。
|