平成18年度 1)ヒト変形性関節症の病理学的検索 東京大学付属病院で変形性股関節症と診断された大腿骨頭12例を用い、免疫組織化学及びIn situ hybridaizationを用いてペリオスチンの局在を検討した。ペリオスチンは、正常マウス及びヒト関節においては靱帯及び最も荷重がかかる関節軟骨の最表層にのみに局在が認められ、その他の部分の軟骨組織や骨外膜以外の骨組織では発現しないのに対し、変形性股関節症ではすでに関節軟骨の最表層は失われており、その他の骨組織での発現は明らかではなかった。一方、一部の滑膜組織ではペリオスチンの発現が認められた。 また、ペリオスチンのレセプターとして知られているインテグリンαvβ3及びαvβ5を検出することを目的として、CD61の免疫染色を行ったところ、骨細胞・軟骨細胞・骨芽細胞・破骨細胞・線維芽細胞をはじめとした多くの細胞で陽性所見が得られた。 2)変形性関節症モデルマウスの作製及びその病理学的検討 (1)25-35週齢オスで約85%に変形性膝関節症を生じる、STR/Ort近交系マウスの関節炎の病理学的検討を行ったところ、進行した関節炎の状態ではすでに関節軟骨は摩耗しており、ペリオスチンの発現は認められなかった。 (2)このため、病態の進行に伴う変化の検討を目的として、ペリオスチン欠損マウスの同近交系への戻し交配を進める予定であったが、産出仔数が著しく少ないことが判明、さらに仔のうち10数%程度しか生存しないことが明らかになった。このため、戻し交配によるペリオスチン欠損マウスの作製は断念せざるを得なくなった。 以上の結果より、正常軟骨細胞ではペリオスチンは産生されておらず、関節を構成する滑膜組織等から分泌されたものが、軟骨組織には他の細胞外基質を介して沈着している可能性が高い。今後は関節周囲支持組織に着目をして、検討を進めていく予定である。
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