研究概要 |
胃の粘膜内腺管形成病変について、MUC gene由来タンパクと細胞増殖、β-cateninの発現の観点からその特性をすでに私は報告し(Int J Cancer94;166-70,2001., Oncology64:251-28,2003.)、良性腺腫と腺癌の間にはadenoma-adenocarcinoma sequenceはほとんどみられないと仮説した。粘膜内腺癌では完全腸型形質を発現する病変においてのみ5番染色体長腕APC遺伝子近傍マイクロサテライトのloss of heterozygosity(5q-LOH)があることをすでに我が施設から報告している(Pathol.Res.Prac.194;405-12,1998)。良性腺腫について免疫組織化学的分類と5q-LOHの解析を行い、良性腺腫の多くを占める完全型腸型形質を発現する病変の約半数で5q-LOHがみられることを私はすでに学会報告した。さらにploidy解析では良性腺腫の全例がdiploid modeを呈し、良性腺腫でもanueploid modeやpolyploid modeがみられると報告のある大腸とは特徴が異なることがわかった。また腸型形質として新たに注目されているCdx2についての免疫組織化学的検討を加えた結果、良性腺腫がすべて核に陽性所見を呈することがわかった。少数ではあるが胃型形質を発現する良性腺腫もみられ、これらでは5q-LOHはほとんどみられず、完全腸型腺腫とは特徴を異にする病変であることが示唆された。これらの研究を雑誌論文として発表する準備を進めている。 また、胃粘膜では再生修復過程や萎縮の質的変化として化生がみられ、萎縮性胃炎や腸上皮化生は胃の前癌病態とも解釈されている。萎縮や腸上皮化生と同様に日常的に観察されているものの、詳細な検討が為されていない粘液腺化生について形態学的、免疫組織化学的検討を行い、学会にて研究発表を行った。 前癌病態とも解釈されているこれらの変化の観察を進めながら、CGH法などのさらに詳細な方法を用いて平成19年度も胃腺腫や腺癌の発生および進展の研究を進めていく計画にある。
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