本研究は、胞巣状軟部肉腫特異的キメラ遺伝子ASPL-TFE3の分子機能を解析し、胞巣状軟部肉腫の病態を明らかにすることを目的とする。本年度は、キメラ遺伝子を発現する胞巣状軟部肉腫症例の検索および全長ASPL-TFE3キメラ遺伝子cDNAのクローニングを行い、以下の成果を得た。 1、ASPL-TFE3キメラ遺伝子を発現する胞巣状軟部肉腫症例をえた。 当施設及び研究関連施設より胞巣状軟部肉腫症例のパラフィン包埋材料および凍結材料を収集した。RT-PCR法によりキメラ遺伝子を発現する検体を検索した結果、ASPL-TFE3キメラ遺伝子(type1)を発現する胞巣状軟部肉腫症例1例をえた。 2、全長ASPL-TFE3キメラ遺伝子cDNAのクローニングに成功した。 (1)RT-PCR法によりcDNA断片を得た。 Gene Bankデータベース上のASPL(AF324220)およびTFE3(NM_006521)配列を参考にして全長ASPL-TFE3配列を推定した。1で得られた胞巣状軟部肉腫症例の凍結組織よりRNAを抽出し、cDNAを2つの断片に分け、RT-PCRでcDNAを増幅した。 (2)シークエンス解析により単離したcDNA断片がASPL-TFE3であることを確認した。 (1)で得られたcDNA断片のシークエンス解析を行った。その結果、変異のないASPL-TFE3断片が得られており、全長ASPL-TFE3 cDNAのクローニングに成功した。 今後は、得られたASPL-TFE3 cDNAを培養細胞に導入して局在を解析するとともに、キメラ遺伝子産物の機能を生化学的に解析する予定である。
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