本研究の目的は、胞巣状軟部肉腫特異的キメラ遺伝子ASPL-TFE3の分子機能を解析し、胞巣状軟部肉腫病態との関連を明らかにすることである。本年度は、胞巣状軟部肉腫症例より単離したASPL-TFE3キメラ遺伝子cDNAを培養細胞株に導入し、その分子機能の解析を行った。 1、ASPL-TFE3キメラ遺伝子cDNAを培養細胞株に導入し、局在を明らかにした。昨年度に単離したASPL-TFE3cDNAをGFP(Green fluorescence protein)との融合蛋白質とし、培養細胞株に導入し、共焦点顕微鏡で局在を解析した。その結果、ASPL-TFE3キメラ遺伝子は細胞の核に局在することが確認され、転写因子として機能することが示唆された。 2、ASPL-TFE3キメラ遺伝子の転写因子としての機能解析を試みた。 ASPL-TFE3キメラ遺伝子の転写因子としての機能を解析するため、TFE3の標的遺伝子(IRS2プロモーター)および全長TFE3cDNAのクローニングを試みた。その結果、IRS2プロモーターおよび全長TFE3cDNAのクローニングに成功した。現在、ASPL-TFE3キメラ遺伝子の転写活性能についてレポータージーンアッセイを用いた解析を行っている。 以上の結果より、ASPL-TFE3キメラ遺伝子は転写因子として機能し、胞巣状軟部肉腫特異的な遺伝子発現をもたらすことが推測された。今後は、ASPL-TFE3キメラ遺伝子の転写活性能を正常TFE3と比較し、キメラ遺伝子が腫瘍特異的遺伝子発現に及ぼす影響を明らかにしていく予定である。
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