研究概要 |
胃腸管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumor;以下GIST)は消化管に発生する間葉系腫瘍であり、その発生にはc-kit遺伝子変異が重要な役割を果たしている。c-kit遺伝子の機能獲得性変異により、c-kit蛋白が活性化されている。c-kitを阻害する分子標的治療薬が臨床応用されているが、c-kitととも血管内皮増殖因子(VEGFR)を阻害し、血管新生阻害効果を持つ分子標的治療も臨床応用が始まりつつある。これまでの研究であきらかとなったのは、(1)GISTにおいてmicrovessel density(MVD)高値は、腫瘍サイズ、組織学的グレード、VEGF発現と有意に相関する。(2)MVD高値、VEGF高発現例はそれぞれ有意に予後不良である。(3)c-kit遺伝子野生型GISTのほうが、同遺伝子変異型より有意にVEGF発現高値である。 さらにGISTの発生・進展に関する分子を明らかにするために、22番染色体上に存在するhSNF5/INI1遺伝子異常を解析したところ、高頻度に同遺伝子のLOH, mRNAおよび蛋白発現低下を認めた。これらの変化は低グレードから高グレード(悪性)までの様々な段階のGISTに認められた。上記の結果より、GISTの発生にはc-kit遺伝子に加え、hSNF5/INI1遺伝子異常も重要であり、VEGF発現は血管新生に重要な役割を果たし、GISTの悪性化に関与していることが示唆された。
|