日本人の胃癌発症にはHelicobacter pylori(H.pylori)感染性胃炎が深く関与している。しかしH.pyloriによる胃炎は胃癌の少ない欧米人にも高頻度にみられることから、欧米人に感染するH.pyloriと本邦に蔓延しているH.pyloriの違いが注目されてきた。最近になってH.pyloriが有する毒性因子CagAの構造が異なっていることが明らかになり、発癌性の差をもたらすものと推測されている。私は、現在まで強毒型である東アジア型CagAを有するH.pyloriを特異的に認識するポリクローナル抗体の作製に成功しており、胃生検組織を用いた免疫組織化学で東アジア型CagAを有していると判断された胃炎患者について、塩基配列を検討したところ、感染しているH.pyloriのcagAはすべて東アジア型であり、両者は完全に一致していた。 本研究で、先ず既にH.pyloriから抽出したDNAを解析して遺伝型を決定していた47例について同一患者から採取された胃生検材料を用いて免疫組織化学を行った。その結果、DNA解析によるcagA遺伝子型と免疫組織化学の結果は非常に高率に一致しており、我々が開発したポリクローナル抗体が胃生検材料を用いての免疫組織化学的手法を用いたcagA遺伝子型の決定に有用であることを証明した。また、H.pylori感染によって細胞内に注入されたCagAが感染後短時間で核に移行していることを明らかかにした。これらの研究結果を学術論文として投稿している。
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