腎線維症や動脈硬化の発症においてAngiotensin II(Ang II)-EGFRのクロストークが存在し、ADAM17がこのクロストークで重要な役割を担っていることが示された。そこで、肝線維化を担う肝星細胞(HSC)でも同様な機構が存在するかをLI 90(活性化HSC)を使い検討し、以下の結果を得た。 1. Ang II(10-7^M)投与により、5分後にEGFRおよびERK1/2のリン酸化がピークを示すことを認めた。 2. AG1478(EGFR inhibitor)、Ormesartan(AT-1 inhibitor)投与により、上記リン酸化は抑制されることが分かった。また、ATP assayにより、HSCの増殖も抑制されることも認めた。しかし、PD 123319(AT-2 inhibitor)では、リン酸化および増殖能の有意な抑制は認められなかった。 3. TAPI-1(ADAM 17 inhibitor)でも上記リン酸化および増殖能は抑制された。 4. Adenovirusにより、ADAM 17をノックダウンしたが、同様に上記リン酸化および増殖能は抑制された。 5. PCRにより、EGFRリガンドのmRNAの発現を検討すると、HB-EGF、amphiregulin、TGF-αの発現は認めたが、epiregulin、betacellulinについては、ほとんど発現していないことが分かった。 6. Adenovirus vectorにより、ADAM17をノックダウンし、Ang II投与によるHB-EGF、amphireguIin、TGF-αの分泌についてELISAで検討すると、いずれも40〜60%分泌が減少するのを認めた。 以上により、Ang-ll-EGFRのクロストークがHSCでも存在し、ADAM17が肝線維症の治療戦略のターゲットになることが示唆された。
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