研究概要 |
近年、噴門部胃癌の発生率は増加しており、本施設でも増加傾向を認める。原因は不明であるが、食道と近接する特殊な環境であることより、飲酒や胆汁酸逆流等による持続的胃粘膜刺激が発癌に関与する可能性が高い。そこで粘膜下浸潤胃癌504例をreviewし、領域別(噴門部、中部、下部)に検討したところ、噴門部胃癌では、1.男性に多く、2.喫煙指数が高値で、3.分化型癌が多く、4.SMC : Submucosal cystの合併頻度が高く、5.粘膜筋板が肥厚し、6.腸上皮化生が強い、といった特徴が得られた。この結果から噴門部胃癌では、高度の粘膜remodelingが存在し、上皮のみならず間質にも強い傷害が生じており、間質細胞の遺伝子不安定性・異常があることが強く疑われる。また、remodelingの一過程であるSMCにも遺伝子不安定性・異常があることが推測される。 以上の背景から噴門部胃発癌は、上皮・間質、特に間質細胞の遺伝子異常が関与し、背景に粘膜remodelingが影響していることを証明すべく研究を行った。 1.対象:粘膜下浸潤癌504例中、噴門部胃癌19例、中部胃癌30例、下部胃癌30例を無作為に抽出。 2.DNA抽出:噴門部胃癌10例の癌部・非癌部における、腺管上皮と近接した間質細胞をMicrodissection法にて分離・採取し、DNAを抽出した。 3.遺伝子異常の検索:10症例のDNAを用いて、(1)NCI推奨マーカー(5種類)、(2)17番染色体マーカー(4種類)におけるMSI(microsatellite instability)及びLOH(loss of heterozygosity)をMultiplex PCR-Gene Scan法にて検索した。 4.結果:噴門部胃癌10例中、癌部上皮にてMSIを2例(20%),:LOH:を1例(10%)、癌部間質にてMSIを1例(10%)確認した。
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