免疫組織化学には3種類のモノクローナル抗体(抗黄色ブドウ球菌、抗PBP2'、抗protein A)を選択した。抗原賦活化に加熱処理を用いた場合、protein A活性化による偽陽性反応が出現した。抗PBP2'抗体は加熱処理が必須のため、動物血清を用いたprotein Aに対するブロッキングの検討を行い、条件を確立した。免疫組織化学はすべてポリマー法による増感で検出可能であった。in situ hybridization (ISH)法において、合成オリゴプローブは病理標本上、実用感度が得られなかったため、3種類の標的核酸(汎ブドウ球菌16SrRNA、黄色ブドウ球菌16SrRNA、mecA mRNA)に対するpeptide nucleic acids (PNA)プローブを新規合成した。汎ブドウ球菌16SrRNA 3種類、黄色ブドウ球菌16SrRNA 1種類、mecA mRNA 4種類のプローブを合成し、感度や特異性を検討して最終的に各1種類を選択した。汎ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌16SrRNAに対するプローブには、蛋白分解酵素二重処理(lysostaphin+proteinase K)が有用であった。mecA mRNAの検出には加熱処理が必要であった。ISH法にはすべて超高感度増感法(CSAII法;Dako Japan)が必要であった。免疫組織化学、RNA-ISH法の両者について、病理標本上で臨床分離菌を用いた特異性検定を行い、実用性を確認した。剖検700例から抽出したグラム陽性球菌感染症例50例を対象として、上記組織化学を適用した。33例がブドウ球菌感染と判定され、MRSAは13例(感染率1.9%)であった。剖検標本では、検出感度や特異性に限界があり、MRSAをMSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)と判定してしまう傾向が見受けられたが、生前臨床的に未発見のブドウ球菌感染を検出可能であった。
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