当院で術後再発に対してゲフィチニブ投与を受けDirect sequenceによりepidermal growth factor receptor遺伝子変異の判明している66例のうち細胞診標本が遺伝子解析に使用可能な29症例、37標本を対象に高解像度熱融解曲線法を用いてepidermal growth factor receptorの変異として知られているExon19のdeletional mutations(DEL)とExon21のL858Rについての遺伝子変異検出の一致率の検証を行った。 まず、それぞれの遺伝子変異を有する培養細胞と野生型を有する培養細胞を用いて高解像度熱融解曲線法の検出感度の検討を行ったところ、DELでは10%、L858Rでは0.1%の遺伝子変異細胞を含有していれば検出可能であることを見いだした。これらの結果を通して、実際の細胞診検体で高解像度熱融解曲線法の有用性の確認ならびに最適な条件を明らかにするために腫瘍細胞量、背景の非腫瘍成分の多寡等を検討した。 その結果37検体中遺伝子変異を有する16例中14例(88%)で高解像度熱融解曲線法とDirect Sequenceのデーターの一致を認めた。さらに、陰性であった2例はいずれも背景に著明な炎症細胞や非腫瘍細胞が出現していたために、これらの標本から腫瘍細胞のみを剥離・抽出を行ったところ2例中1例で解析が可能となり、全体で感度は94%に上昇した。なお、特異度は100%であった。 これらの結果からは、高解像度熱融解曲線法は日常使用されている細胞診検体からでも高感度にかつ容易にEGFRの遺伝子変異を検出可能であることが証明された。また、腫瘍細胞量が少ない場合は腫瘍を抽出することにより感度を高めることが可能であることから、細胞診検体の診断においては良悪の判定のみならず、遺伝子変異解析に使用可能かの判定も今後行っていく必要があると考えられた。
|