研究課題
本研究では、ウイルムス腫瘍(腎芽腫)の発生機序解明と病態診断法の開発を目的とし、本腫瘍の原因遺伝子の候補とされているWT1遺伝子と11p15領域の異常を解析した。病理組織診断がウイルムス腫瘍と確定された散発性腫瘍、40例について解析を行った。腫瘍組織(凍結)よりゲノムDNAを抽出し、WT1遺伝子ゲノムのPCR産物のダイレクトシークエンス法によって、解析した40例中30%においてWT1遺伝子のコード領域内の塩基配列レベルでの変異を同定した。変異は、点突然変異(ナンセンス変異、ミスセンス変異)、欠失、挿入など、様々であった。また、1例のイントロン変異例も存在した。WT1遺伝子、近傍の11p13領域、11p15領域のLossofheterozygosity (LOH)を解析した。その結果、WT1遺伝子変異例の大部分では、WT1遺伝子内あるいは近傍の11p13領域にLOHが同定され、その結果、正常のWT1遺伝子産物は全く発現していないと考えられた。さらに興味深いことに、上記LOH例の多くはWT2領域とされる11p15領域にも及んでいた。これらの結果から、従来15%程度とされていたウイルムス腫瘍におけるWT1変異の割合が、より詳細な解析を行うと、少なくとも本邦では30%程度であると考えられた。また、WT1変異を有する腫瘍は、組織型としては間葉系成分が優位な症例が多いこと、また、両側例や後腎芽組織遺残を伴う例に多いことが判明した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Pediatric Blood and Cancer (Epub ahead of print)
Genes Chromosomes Cancer. 45(6)
ページ: 592-601
Pathology International 56(9)
ページ: 543-548