これまでにラット初代培養心筋細胞を用いて、内因性カルシニューリン抑制蛋白質であるZAKI-4(αおよびβ)を過剰発現するプラスミドベクターを遺伝子導入し、肥大刺激下におけるANPやβ-MHCのプロモーター活性の増大の抑制効果を見出した。そこでZAKI-4βは種々の肥大刺激に対する内因性の抑制分子であるという仮説に至り、世界に先駆けZAKI-4βを心臓特異的に過剰発現するトランスジェニックマウスを作製した。本年度は、そのマウスを用いて昇圧因子であり、肥大促進因子でもあるアンギオテンシンIIの持続的な刺激によるZAKI-4βの心肥大抑制機構と心機能に対する影響を検討した。実験方法として、生後8-10週齢のZAKI-4βマウスHomozygoteおよびHeterozygote、正常群としてWild-typeマウスを使用し、各マウスはランダムに2グループ(n=8-10)に分けた。グループ(1)は、昇圧用量のアンギオテンシンH投与を432μg/kg/dayとなるように浸透圧ポンプにて皮下に埋め込みを行った。グループ(2)は、コントロール群として生理食塩水を同様に用いた。心肥大を発症することが予想される2週間後、ペントバルビタールで麻酔し、心エコーによる心機能あるいは血行動態等の生理的解析を行った後屠殺し、心筋組織を用いて種々の遣伝子発現あるいは病理学的解析等を行った。その結果として、正常マウス群へのアンギオテンシンII投与は、血圧の上昇(135±10vs.正常群98±5mmHg)に伴い、左室体重比、心筋細胞経、心筋間質ならびに血管周囲の線維化などの有意な上昇が認められた。一方、ZAKI-4βマウス群は血圧には影響しない(127±5.5mmHg)が、それら心肥大の症状を明らか抑制した。大変興味深いことに、血管周囲の線維化はZAKI-4βマウスでは抑制されなかった。現在、その抑制機構を解明するために、肥大関連遺伝子の発現やカルシニューリンの酵素活性を測定するなどして、新たな知見を得つつある。今後のさらなる解析が期待される。
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