最終目標はラット肺腫瘍モデルにナノサイズオーダー微粒子を投与し肺腫瘍への影響を検索することである。まず、ラット肺発がんモデルの確立を目指した。肺腫瘍を発生させる代表的な物質としての20mg/ratでNNKを腹腔内投与し、経時的に屠殺剖検し、肺に腫瘍が発生する時期を検討した。F344雄ラット、6週齢、25匹を5匹ずつ5群に分け、NNKを腹腔内投与後、1群ずつ37週まで経時的に屠殺剖検した。12週で過形成性病変が見られたものの、以降肺腫瘍は発生しなかった。そこでさらに追加の予備試験を行った。10mgNNKを3回腹腔内投与する群、2週間の0.1%DHPN飲水投与を行う群を設け、さらに気管内投与により肺に炎症を起こす代表的微粒子のQuartz0.5mgを気管内投与する群をそれぞれの群について設定し、30週まで屠殺し評価を行った。その結果、NNK10mgを3回腹腔内投与によって、肺腫瘍は発生するものの、経時的に減少し、30週ではほとんど肺腫瘍は見られなくなった。DHPN飲水投与では肺腫瘍は経時的に増加し30週では肺腺癌の発生も見られた。Quartzの気管内投与による腫瘍数に有意な変化は見られなかった。また、quartz投与後、12週では腫瘍性病変と炎症性変化の区別がつきにくかったが、30週では炎症細胞浸潤が減少し、腫瘍が明瞭に判別可能であった。以上より、0.1%DHPN飲水投与を行い、30週で評価するというモデルが微粒子の肺腫瘍promotion作用を検討するには適していると考えられた。本実験では、この系を用いて、実際にナノ粒子の肺腫瘍promotion作用の有無を検討する。
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